銃

2019年10月23日[水] DVDリリース!詳しくはこちら
かく熱きにもあらず、冷やかにもあらず、唯ぬるきがゆえに、われ汝をわが口より吐き出さん。 ヨハネの黙示録

物語

story

俺は拳銃を拾った――。
大学生、西川トオル(村上虹郎)は、雨の夜の河原で、ひとりの男の死体と共に放置されていた拳銃を手にし、それを自宅アパートに持ち帰った。まもなく、その銃は彼にとって、かけがえのない宝物のような存在になった。見つめれば見つめるほどに、触れたならば触れるほどに、愛しさがこみあげてくる。誰かを脅すことも、守ることも、殺すことも、また自ら死ぬことも可能にする銃という<道具=武器>は、大学生活の心的様相もあざやかに変えていく。
悪友のケイスケ(岡山天音)に合コンへ誘われたトオルは、その夜出逢った女と一夜を過ごす。翌朝、目覚めると、女がトーストを焼いていた。朝食をとりながらテレビを見ていると、あの銃と関係する男の遺体が発見されたというニュースが目に飛び込んでくる。途端に気分が悪くなったトオルに対し、優しく接する女。その日以来、トオルは彼女のことを“トースト女”(日南響子)と頭の中で呼ぶことにした。そしてセックスフレンドとして、度々性欲を吐き出すようになった。

アパートの隣の部屋から、時折、子供の泣き声と、我が子を罵倒する母親(新垣里沙)の声が漏れてくる。それはトオルにとって、親との忌まわしい過去をよみがえらせる。彼は大音量の音楽で打ち消そうとしていた。
大学の学食で、以前も講義中に話しかけてきたヨシカワユウコ(広瀬アリス)と再会した。トオルは、やけにフレンドリーで、自分に興味がある素振りを見せる彼女と付き合うことを妄想した。すぐにセックスする対象ではなく、あえて時間をかけて親しくなることを計画した。それはきわめて魅惑的な「ゲーム」に思えた。意識的かもしれないし、無意識かもしれないが、いずれにせよ、彼はヨシカワユウコと“トースト女”を両極に配し、ふたりの女のあいだで、自分なりのバランスをとっていく。
日々、銃に惹かれていくトオル。やがてカバンに入れて持ち歩くようになった。その刺激は、トオルをさらに高揚させていった。

トオルのアパートをひとりの刑事(リリー・フランキー)が訪れた。刑事は、トオルと銃のすべてを知っているようだった。部屋に入ろうとする刑事をなんとか防いだトオルだったが、喫茶店に移動して、尋問を受ける。「人間を殺すとね、不思議なことかもしれませんが、普通の理性でいれなくなるそうですよ」そして、刑事からある言葉が発せられたとき、トオルは後戻りのできない「どこか」に、否応なく踏み出していくのだった――。